中傷テープを流し、名誉を傷つけた

略式命令などによると、弁護士は、福岡県大川市内の木工会社社長(当時60代)と専務(当時60代)=肩書はいずれも当時=の兄弟と共謀。1983年3月の大川商工会議所会頭選挙で、立候補した製材会社長を「悪質利権屋」などと中傷する文書を配布した。また、「悪質利権屋」などと中傷する内容のテープを拡声機で流し、名誉を傷つけた。

製材会社長は、会頭に当選後、この兄弟を名誉棄損罪で福岡地検に告訴した。1990年12月、兄弟の罰金刑が最高裁で確定した。

福岡地検に告訴→柳川簡裁で罰金20万円の略式命令

被害者は、この弁護士についても、1989年9月に名誉棄損罪で福岡地検に告訴した。柳川区検は1990年2月、弁護士を略式起訴した。2日後に柳川簡裁で罰金20万円の略式命令が出た。弁護士は、1990年2月28日に罰金を払い、刑が確定した。

当時の報道によると、兄弟の会社経営が、1978年ごろから悪化した。このため、材料を納入していた社長ら3人の債権者が再建に乗り出し、会社所有の土地に大型スーパーを誘致するなどした。

これに対し兄弟は「3人が会社を乗っ取ろうとしている」などとして、土地の名義変更や株の返還などを弁護士に依頼した、という。

懲戒処分で弁護士会を除名された場合

製材会社長は「選挙前の会合で、私が『悪徳弁護士がいては大川は発展しない』と非難したため、弁護士は頭にきて、中傷したのではないか」とコメントした。

弁護士法6条では、懲戒処分で弁護士会を除名された場合、3年間は資格を失う、などの規定がある。

福岡県弁護士会の事務局によると、弁護士法64条で「懲戒の事由があったときから3年を経過したときは、懲戒の手続きを開始できない」とある。「懲戒の事由」とは一般的に行為そのもの(本件の場合は1983年)とされているという。そうであれば、本件は懲戒の対象外だった。

参考動画

▼北村晴男弁護士の解説「SNS上の誹謗中傷、逮捕される基準は?」